線型一階型の微分方程式、積分因子をかけて解く

今回の内容の動画版→1階線型微分方程式の解き方

微分方程式いろいろ解けたらかっこいいじゃないですか、ということで今回は変数分離形よりもう少し工夫が必要な一階線型のパターンを扱います。変数分離形については以前の記事でも扱っているのでまだの方は是非そちらもご覧ください。

変数分離形の微分方程式

2019.04.29

さて、今回の話題の一階線型とは

\( \ \ \displaystyle \frac{dy}{dx}+P(x)y=Q(x) \)

という形のことです。\(  y’ =\frac{dy}{dx}\) が\( \displaystyle  y \)についての\(  1 \)次式となっていることから一階線型と呼ばれます。この型はいろいろと解き方がありますが、今回は積分因子という考えを紹介します。

一階線型微分方程式の解法

一階線型微分方程式

\( \ \ \displaystyle \frac{dy}{dx}+P(x)y=Q(x) \)

は、両辺に\( \displaystyle  e^{\int P(x)dx}  \)(積分因子という)をかけると解ける

なぜ上の方法で解けるかというと、積分因子をかけることで左辺がうまいこと積の微分の形になるからです。実際、上式両辺に\( \displaystyle  e^{\int P(x)dx}  \)をかけると

\( \ \ \displaystyle  e^{\int P(x)dx}\frac{dy}{dx}+e^{\int P(x)dx}P(x)y=e^{\int P(x)dx}Q(x) \)

となり、この左辺がちょうど\( \displaystyle  e^{\int P(x)dx}\cdot y \)を微分した形になっています!ということで

\( \ \ \displaystyle  \frac{d}{dx}\left(e^{\int P(x)dx}y\right)=e^{\int P(x)dx}Q(x) \)

から両辺を\(  x \)で積分し、\(  y \)を求めることができます。最終的な\(  y \)の形を公式として覚えるのは大変なので、上のアイディア「\(  y \)の”係数”の積分を指数に乗っけたもの(=積分因子)をかける」ということだけおさえて、具体例をやってみましょう。

次の微分方程式を解け。

\( \ \  \displaystyle  \frac{1}{\cos x}\frac{dy}{dx}+\frac{3}{\sin x}y=1 \ \left(0<x<\frac{\pi}{2}\right)\)

(解)両辺に\(  \cos x \)をかけた

\(\ \  \displaystyle  \frac{dy}{dx}+3\frac{\cos x}{\sin x}y=\cos x \) …(A)

は一階線型となる。よって、積分因子すなわち\(  y \)の”係数”の積分を\( \displaystyle  e \)の右肩に乗せた

\( \ \ \displaystyle  e^{3\frac{\cos x}{\sin x}} \)

を計算しておこう。

\(\ \  \displaystyle  e^{3\frac{\cos x}{\sin x}}=e^{3\log \sin x}=\sin^3 x \)

となる。これを元の微分方程式(A)の両辺にかけて

\(\ \  \displaystyle  y’\sin^3 x+3\cos x(\sin ^3x)y=\cos x \sin^3 x \)

左辺は狙い通り積の微分になっている。

\(\ \  \displaystyle  (y\sin^3x)’=\cos x\sin^3x \)

両辺を積分する。\( \displaystyle  C \)は積分定数として

\( \ \ \displaystyle  y\sin^3x=\frac14\sin^4x+C \)

となる。よって求める解は

\( \ \ \displaystyle  y=\frac14\sin x+\frac{C}{\sin^3 x} \)

となる。

今後、\(  y’+P(x)y \)の形を見たときに「なんかかけたら積の微分になるんじゃね?」と思いつけるようにして、積分因子のことを思い出せるようにしておきたいですね。では。

★★★

今回の内容の動画版です。